机上に踊る胆と熱

中小企業診断士試験についての(役に立つ)所感

A Question of Honour ―― 平成30年二次試験「再現答案」など。




BGM

www.youtube.com



<事例I>

与件文(全文)

平成30年 事例I 与件本文

 

【第1問】 20点

研究開発型企業であるA社が、相対的に規模の小さな市場をターゲットとしているのはなぜか。その理由を、競争戦略の視点から100字以内で答えよ。


理由は、規模の小さい市場のため新規参入者や代替品の登場による経営の不安定化を回避し易いためである。また、外部環境の変化に対しても、事業の安定化が比較的容易であるためである。

【第2問】 40点
A社の事業展開について、以下の設問に答えよ。
(設問1)
A社は創業以来、最終消費者に向けた製品開発にあまり力点を置いてこなかった。A社の人員構成から考えて、その理由を100字以内で答えよ。

理由は、人員構成の9割近くを技術者が占め、最終消費者のニーズを収集する営業部門が弱いためである。そのため最終消費者向けの製品開発は、A社の中核能力を活かせない事業となると判断したためと考えられる。

(設問2)
A社長は経営危機に直面した時に、それまでとは異なる考え方に立って、複写機関連製品事業に着手した。それ以前に同社が開発してきた製品の事業特性と、複写機関連製品の事業特徴には、どのような違いがあるか。100字以内で答えよ。

違いは、以前に開発してきた製品は売切り型の事業であり収入源としては安定しなかったのに対し、複写機関連製品事業は本体の販売後も、複写機トナー等の消耗品の販売も可能であり、安定した収入源となる点である。

【第3問】 20点
A社の組織改編にはどのような目的があったか。100字以内で答えよ。

目的は、事務機器市場の変化に対応して先進的な事業展開を進めるためである。具体的には、①各部門を統括する部門長を役員が兼任、②技術者の混成チーム結成により、経営資源の市場適応を、有効なものとした。

【第4問】 20点
A社が、社員のチャレンジ精神や独創性を維持していくために、金銭的・物理的インセンティブの提供以外に、どのようなことに取り組むべきか。中小企業診断士として、100字以内で助言せよ。

取り組みは、生産や販売の委託先企業との交流機会を設定し、社員のチャレンジ精神や独創性の維持を図る。それにより、時流を先読みし先進的な事業展開を、長期維持可能なものとする。

<事例II>

【第1問】 25点
B社の現状について3C(Customer:顧客、Competitor:競合、Company:自社)分析の観点から150字以内で述べよ。

仕事や執筆・創作活動のために訪れる宿泊客を顧客とし、歴代のB社社長たちが支援してきた芸術家による美術品を配置した、文化の香りに満ちた施設を有することで、駅前のチェーン系ビジネスホテルと差別化している。一方で、拡大するX市の観光需要を、B社だけが享受出来ていない事実もある。

【第2問】 25点
B社は今後、新規宿泊客を増加させたいと考えている。そこで、B社のホームページや旅行サイトにB社の建物の外観や館内設備に関する情報を掲載したが、反応がいまひとつであった。B社はどのような自社情報を新たに掲載することによって、閲覧者の好意的な反応を獲得できるか。今後のメインターゲット層を明確にして、100字以内で述べよ。

インバウンドを含むX市観光客に対し、①歴代B社社長たちが支援してきた芸術家の美術品や、②宿泊客から好評を得た日本を感じられる朝食の情報を掲載し、好意的な反応を獲得する。

【第3問】 25点
B社は、宿泊客のインターネット上での好意的な口コミをより多く誘発するために、おもてなしの一環として、従業員と宿泊客の交流を促進したいと考えている。B社は、従業員を通じてどのような交流を行うべきか、100字以内で述べよ。

従業員の英語力を活かし、インバウンド客に対してX市内の観光案内をすることで交流する。SNS投稿に向く伝統を思わせる和菓子や歴史ある街並みを従業員が同行することで、好意的な口コミを得る。

【第4問】 25点
B社は、X市の夜の活気を取り込んで、B社への宿泊需要を生み出したいと考えている。B社はどのような施策を行うべきか、100字以内で述べよ。

施策は、宿泊客から好評を得た朝食のノウハウを活かし、夕食の提供を行う。地域の祭や名刹を訪れる観光客に事前予約なしでも提供し、顧客と関係を持つ。そして、宿泊客となるよう顧客生涯価値の最大化を図る。

<事例III>

【第1問】 20点
顧客企業の生産工場の海外移転などの経営環境にあっても、C社の業績は維持されてきた。その理由を80字以内で述べよ。

理由は、金型設計・制作部門を持ち、技能士など資格取得者を有し技術力を強化したことで、顧客企業のコスト削減ノウハウを蓄積し、工業団地内企業とも協働可能なことである。

【第2問】 20点
C社の成型加工課の成型加工にかかわる作業内容(図2)を分析し、作業方法に関する問題点とその改善策を120字以内で述べよ。

問題点は、作業員の作業時間の5割が手待ちとなっている点である。改善策は、①連合作業分析により人と機械の効率化、②内段取りを外段取り化、することで顧客企業からの短納期化、小ロット化、多品種少量化の要求に対し、経営資源を有効に活用していく。

【第3問】 20点
C社の生産計画策定方法と製品在庫数量の推移(図1)を分析して、C社の生産計画上の問題点その改善策を120字以内で述べよ。

問題点は、製品A以外の製品も含んだ、全体最適観点の生産計画の不在である。改善策は、①ロットサイズ適正化のために、日程毎柔軟に生産計画を見直し、②混合生産体制を効率的に稼働させるため、他製品の受注情報も生産計画に反映し、過大な製品在庫を抑制する。

【第4問】 20点
C社が検討している生産管理のコンピュータ化を進めるために、事前に整備しておくべき内容を120字以内で述べよ。

事前に整備すべきは、各置き場で探し、移動し、準備する作業に長時間を要している金型、使用材料の位置の確定である。段取り時間の短縮などの改善のため、作業員が効率よく金型、材料などを使用できる環境を実現し、生産計画のIT化を効果的なものにする。

【第5問】 20点
わが国中小企業の経営が厳しさを増す中で、C社が立地環境や経営資源を生かして付加価値を高めるための今後の戦略について、中小企業診断士として120字以内で助言せよ。

戦略は、国内に戻る傾向にある企業に対し、①顧客企業一社からの受注に成功した高度な成形技術、②工業団地内企業との共同開発可能な立地を生かし、顧客企業のコスト削減を実現する高付加価値製品を製造する。そして長期的に顧客企業の利益最大化を図っていく。